イデア・パートナーズ法律事務所
  1. 日本語 / English
  2. 0364165662

 

TEL:03-6416-5662
平日 9:30~17:30
お申込みフォーム
トピックス

自己破産をしたら保険は解約しないといけない?

借金の整理をしたいけれど、現在加入している保険などはすべて解約しなければならないのでしょうか?

保険解約の問題は、債務整理を考えていらっしゃる方にとって非常に重要な問題です。

ここでは、自己破産をした場合に保険を解約しなければいけないのか、その他の債務整理の場合はどうかについて詳しく解説いたします。

1.自己破産の場合に保険解約は必要?

自己破産って何をするの?

自己破産とは、裁判所に申立てを行い、全ての債権者に自己破産手続が開始したことを通知した上で、自分の資産や負債を明らかにし、借金を全額免除してもらうための手続です。
申立ての際には債権に関する詳細な情報(債権者名、債権者の住所、債権額、最初の借入時期、最後の借入日、最後の返済日、遅延損害金を含めた債権の総額など)や、資産の内訳、生活における収入と支出の内容など、様々な書類を準備して提出する必要があります。

自己破産の原則は財産処分と配当

借金を返済できなくなってしまった以上、いま持っている財産をすべて処分してお金に換えて、債権者に分配をし(配当)、それでも足りない部分については免除してもらう、これが自己破産の原則です。

広い範囲で認められる自由財産

もっとも、本当にすべての財産を処分させてしまうと、破産者は借金が無くなってもその後の生活をしていくことができません。今の時代、家もない、電話もない、洗濯機もない、冷蔵庫もないという状態で生活しろと言っても無理な話です。

そのため、破産法その他の法律によって、自己破産をしても手放さなくてよい財産がかなり広く定められています。この、自己破産をしても手放さなくてよい財産のことを自由財産といいます。

自由財産についての詳しい説明は こちら  をご覧ください。

自由財産の範囲は、裁判所の運用上さらに拡張されており、例えば東京地方裁判所の場合、見込み額が20万円以下の保険解約返戻金は、自由財産とみなされており、処分する必要がありません。つまり、解約しなくても良いということです。

「見込み額が20万円以下の保険解約返戻金」とはどういうことかについて解説します。

保険の種類(公的保険と個人保険)

保険には様々な種類がありますが、まず、国や地方自治体が運営する公的保険と、民間企業が運営する個人保険に分けることができます。

公的保険の例として、国民健康保険や国民年金、厚生年金などが挙げられます。

年金が保険だということについては、一見すると違和感を覚える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、年金も立派な保険です。保険とは、「何らかのリスクに備えて、みんなでお金を出し合って貯めておき、そのリスクが現実化した時には、貯めたお金から一部を拠出して助けましょう」という理念に基づいています。では、年金はどのようなリスクを想定した保険でしょうか。答えは、「長生き」です。ちょっと残酷な話かも知れませんが、もし人が、65歳まで働けて65歳で亡くなってしまうのであれば年金は必要ありません。しかし、実際には65歳まで働いた後、日本ではさらに20年間くらい元気に暮らしていくことができます。そうすると、この20年間分の生活費等の支出というリスクに備えて、年金の積み立てが必要になるのです。

少し脱線しましたが、公的保険すなわち、国民健康保険や国民年金、厚生年金などは、自己破産をしても影響を受けませんのでご安心ください。その代わり、自己破産をしても滞納額は免責もされませんのでご注意ください。

自己破産によって影響を受けるのは民間企業が運営する個人保険の方です。

個人保険のタイプ(生命保険と損害保険)

個人保険には、保険期間中に死亡または高度障害状態になった際に保険金が支払われる生命保険と、火災・地震・自動車事故などの事故に遭った時に保険金が支払われる損害保険とに分けられます。

生命保険の代表は死亡保険ですが、死亡保険の中にも定期保険、終身保険、養老保険といった種類がありますが、重要なポイントは、解約返戻金がもらえる保険かどうかです。

解約返戻金とは、保険契約を途中で解約した場合に、これまでに積み立ててきた保険料や契約期間に応じて支払われるお金のことです。掛け捨ての保険であれば、解約返戻金はゼロか、あっても微々たるものですが、資産形成機能のある養老保険などの場合には、契約期間によってはかなり大きな解約返戻金がもらえることになります。

この解約返戻金の金額が、自己破産申立の時点で20万円を超えている場合には、破産手続の中で解約され、債権者への配当に回されることになります。具体的には、自己破産申立後、破産管財人が、あなたの代わりに保険の解約手続を行い、解約返戻金を受領して預かることになります。

損害保険の場合、掛け捨てのものがほとんどですので、解約返戻金が問題になることはあまりありません。

まとめ

以上より、自己破産手続においては、保険のタイプではなく、解約返戻金がいくらあるかによって、解約が必要かどうかが決まります。解約返戻金が20万円を超えていなければ、生命保険でも医療保険でも、解約せずに保険加入を継続することが可能です。

また、現金も預金もない、資産と呼べるものは保険の解約返戻金しかないので破産申立の費用すら捻出できない、というような場合はどうずれば良いでしょう?

このような場合には、自己破産申立前に保険を解約して解約返戻金を受け取り、そこから破産申立費用を捻出するという方法をとることもできます。ただし、破産申立費用ではなく、ギャンブルや風俗などの浪費行為に使ってしまったとなると、意図的に資産を目減りさせたということで、免責不許可事由とみなされてしまうのでご注意ください。

2.その他の債務整理で保険解約は必要?

任意整理の場合

任意整理は、貸金業者と個別に交渉を行い、債務額を減らしたり、利息のカットや分割回数の変更によって月々の返済額を減らし、スムーズな完済を目指していく手続です。

弁護士があなたの代わりに貸金業者と交渉を行い、現在の返済条件よりも有利な条件での和解契約締結を目指していきます。

任意整理は、自己破産や個人再生と異なり、裁判所を通さず、各債権者との間で交渉を行っていくものです。したがって、財産を処分しなければならないといった条件は何もありません。当然、保険についても、生命保険、損害保険、掛け捨てタイプ、積み立て貯蓄タイプといった種類を問わず、どんな保険でも解約の必要はありません。

もっとも、任意整理の場合、将来発生する利息をカットしてもらったり、長期分割を認めてもらうことで月々の返済金額を減らすことができますが、原則として元金部分については返済していかなければなりません。そのため、毎月の給与などの収入だけで返済が可能であれば問題ありませんが、それだけでは返済が厳しいという場合には、保険解約も含めた生活の見直しも必要かも知れません。

任意整理を一つの転機と捉えて、本当に今の保険が自分の生活に必要なものなのかどうか、無駄に掛け金を支払ってしまっていないかどうか、改めてチェックしてみると良いでしょう。

個人再生の場合

個人再生は、裁判所に申立てを行い、住宅ローン以外の借金を大幅に減額してもらう手続のことです。

自己破産と違い、減額された後の借金については、原則3年(最長5年)かけて返済していくことになりますが、その代わりに自動車や株、住宅といった自分の財産を手放す必要がありません。

ですので、保険についても、生命保険、損害保険、掛け捨てタイプ、積み立て貯蓄タイプといった種類を問わず、どんな保険でも解約の必要はありません。

ただし、個人再生の場合、任意整理と違って一点注意しなければならない点があります。それは、個人再生の場合、清算価値保障の原則といって、もし自己破産をしたとしたら、申立人の財産を換価して、債権者にいくら配当されるかという仮の金額(予想配当額)を算出し、その金額以下には借金を減額できないというルールがあるからです。したがって、多額の解約返戻金が発生してしまう場合、その保険を解約するしないにかかわらず、清算価値(予想配当額)を押し上げてしまい、借金の大きな減額ができなくなってしまうのです。

もし多額の解約返戻金が発生してしまって清算価値が高くなってしまうことが予想される場合、その保険を解約して解約返戻金を受け取り、それを個人再生申立ての費用に充てるなどして、清算価値を下げるといった工夫も一つでしょう。

まとめ

以上のとおり、任意整理や個人再生では保険の解約は必要ではありません。ただ、毎月の保険料が生活を圧迫している場合もありますので、もし借金の返済が苦しいなと感じたら、加入している保険の見直しをしてみる良いきっかけかも知れません。

Copyright©イデア・パートナーズ法律事務所.
All Right Reserved.無断転写・転載禁じます