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税金の滞納を続けるとどうなりますか?

税金をしばらく滞納していると、税務署などから納税を催促されるということは、みなさんもなんとなく想像が付くと思います。

催促を受けた時点ですぐに納税ができれば大事にはなりませんが、催促を受けてもまだ滞納した場合、差押え、滞納額の回収という流れで進んでいきます。

ここでは、税金の種類や滞納した場合の手続についてどんなことが実際に行われるのか詳しく解説していきます。

本文後半では債務整理についても説明していますので、そちらもご参照ください。

税金の種類

税金には、国が徴収する国税と、地方公共団体が徴収する地方税があります。国税と地方税の代表的なものは次の表のとおりです。まずは、どの税金をいくら滞納しているのか確認する必要があります。

税金の種類 代表的な税金の例
国税 所得税、復興特別所得税
贈与税、相続税
消費税、酒税        など
地方税 固定資産税、都市計画税
不動産取得税、住民税
法人事業税、個人事業税   など

税金の滞納を続けた場合どうなってしまうのか

延滞金の発生

税金を滞納してしまうと、滞納している税金額に対して延滞金が発生します。延滞金の計算については、国税と地方税で異なります。

ア 国税の延滞金の割合について
国税については、納期限から2か月までは3%弱、それより後は9%前後となります。国税の延滞金の割合は毎年変わる可能性があります。 (国税通則法60条,租税特別措置法93条2項,94条)

イ 地方税の延滞金の割合について
地方税については、納期限から1か月までは3%弱、それより後は9%前後となります。地方税の延滞金の割合は、毎年変わる可能性があります。
(地方税附則3条の2)

督促状が送られてくる

ア 国税について
国税通則法という法律によると、原則として納期限から50日以内に督促状が送られてくることになります。
50日以内に督促状が発行されていなくても、それによって納税の義務を免れるわけではありませんし、50日過ぎてなされた督促が無効となるわけではありません。
(国税通則法37条)

イ 地方税について
地方税法によると、納期限から20日以内に督促状が送られてくることになります。20日以内に督促状が発行されていなくても納税の義務を免れるわけではないこと、納期限から20日を過ぎてなされた督促が無効となるわけではないことは国税と同じです。 (地方税法371条など)

差押調書が送られてくる

督促状を発した日から10日以内に完納しないと財産を差し押さえられることになります。督促状が届いた日から10日ではないことと、国が督促状を発行した日を1日目と数える点に注意が必要です。これは国税と地方税とで共通するところです。督促状が発行されてから10日過ぎてしまったらいつ差押えがなされてもおかしくない状況になります。

差押えがされると、滞納者の元には、差押調書(不動産を差し押さえた場合は、差押書)という書面が送られてきます。この書面には、滞納している税金の金額(延滞金が発生していれば延滞金も記載されていると思います。)と滞納者の財産を差し押さえたこと、どの財産が差し押さえられたのかなどが記載されています。
(国税徴収法54条,68条)

差押えをされるとどうなるか

滞納者の元に差押調書(又は差押書)が送られてきた場合、その他のところでどのようなことが起こっているのか、差し押さえられた財産の種類ごとに解説します。

ア 不動産が差し押さえられた
滞納者が土地又は建物を所有している場合には、その土地や建物を差し押さえられることがあります。この場合、その土地や建物の登記簿に差押えの登記がなされます。これによって、直ちに家や土地が使えなくなるということではありませんが、滞納を続けていると、換価といって、国又は地方公共団体が強制的に土地や建物を競売し、その売却代金を滞納している税金に充当することとなります。
(国税徴収法68条)

イ 預金が差し押さえされた
滞納者が銀行などの金融機関に預金を持っている場合、その預金を差し押さえられることがあります(正確には、銀行にあるお金そのものが差し押さえられるわけではなく、滞納者が金融機関に対して有する預金債権が差し押さえられます。)。預金が差し押さえられた場合、国や地方公共団体から差押通知書が預金を預かっている金融機関に送付されます。この差押通知書にも差押調書と同様の内容が記載されているものが多いと思われます。預金の差押えがなされるとすぐに国や地方公共団体が預金を滞納税額に充当することが考えられますので、近日中に他の引き落としがある場合、至急預金残高を確認した方が良いでしょう。また、税金を滞納して預金を差し押さえられた場合、銀行との約定で、取引停止となってしまう可能性もあります。もし、事業用に使用している口座の預金について差押えがなされると事業上の支障は極めて大きなものとなりかねません。
(国税徴収法62条)

ウ 給料等が差し押さえされた
給料等については、滞納者が全額差押えすることに承諾しない限り全額の差押えはできません。もし滞納額が、1か月分の給料の額を超える場合には、滞納が解消されるまで、毎月の給与のうち一定額が税金に充当されることになります。この場合、滞納者に差押調書が送られると同時に会社に差押通知書が送付されます。そうなると、滞納者が税金を滞納していることや滞納額について会社が知ることになってしまいます。
(国税徴収法62条)

エ 未回収の代金債権が差し押さえられた

未回収の代金債権が差し押さえられた

上の図のような場合を想定して下さい。滞納者は、地方税を50万円滞納しているとします。
他方で、滞納者は、第三債務者に対して、30万円の代金債権を有しているとします。 この時に地方公共団体が、滞納者の代金債権を差し押さえたというのがここで説明する場面です(国税の滞納であれば、右の図の「地方公共団体」というところが国となります)。

この差押えがなされた場合、第三債務者には、差押通知書が送付され、滞納者への支払が禁止されます。そして、滞納者は、第三債務者に対して代金債権を取り立てることができなくなります。これによって、第三債務者は、滞納者が税金を滞納していることについて知ることとなります。また、第三債務者は、地方公共団体(又は国)に代金30万円を支払うこととなります。

仮に第三債務者が、国又は地方公共団体に代金債権の支払をしなかった場合、国又は地方公共団体は、当該第三債務者に対して訴訟を提起する可能性があります。 なお、上記の例で、30万円の回収ができたとしても滞納税が20万円残りますので、滞納者は、引き続き、国や地方公共団体から納税を求められることになります。

滞納解消に向けて何をすべきか

税金以外にも債務がある場合

税金の滞納を継続すると、差押えがされ、強制的に滞納分の回収をされることとなります。その手続に伴って、銀行の取引停止や会社に滞納していることを知られてしまうなどの不利益が生じることがあります。
滞納しない、又は滞納してしまったけど差押えがされる前に滞納を解消することができれば良いのですが、新型コロナウィルスの流行など予期せぬ事情によって収支のバランスが崩れてしまい、他からの借入れについてやりくりが厳しかったとか、消費者金融などからの借入額が大きくなってしまいどうにもいかなくなってしまったなど税金を滞納するに至った経緯は様々あると思います。

個人の方の債務整理の方法としては①貸金業者と個別に交渉を行い、債務額を減らしたり、利息のカットや分割回数の変更によって月々の返済額を減らし、スムーズな完済を目指していく任意整理、②裁判所に申立てを行い、全ての債権者に自己破産手続が開始したことを通知した上で、自分の資産や負債を明らかにし、借金を全額免除してもらうための自己破産、③個人が経済的に困窮した場合に再建を図るために裁判所に申し立てる個人再生④自己破産や個人再生と同じように裁判上の手続として特定調停があります。

法人であれば、①任意整理、②民事再生、③株式会社を対象とした再建を目的とする会社更生、④特定調停あります。

破産と聞くと、これまでの借金は帳消しになるというイメージがあるかもしれませんが、税金は、非免責債権といって帳消しにはなりません。そのため、滞納者は、破産をした後も破産前の滞納税を納める必要があります。

他方で、法人は、破産により会社自体が消滅しますので、その法人に対して破産以降に以前の滞納税を請求されるということはありません。

非免責債権については、 こちら で詳しく解説しています。

税金の滞納が続いており、他の債務も残ってしまっているという状況であれば、債務整理をする必要が高い状態にあると思います。債務整理には種類があり、その中には裁判所を通す手続もあるため、どの方法が自分にとって最善の方法なのか弁護士に相談すると良いでしょう。また、税金を滞納していないが近い将来に滞納してしまうかもしれないとか滞納してしまって間もないという状況であっても、滞納額が膨れ上がってしまう前に、他の債務も含めてどれくらいの負債があるのか、どういう順番でどのように返済していくのが良いのか早めに弁護士に相談するのが良いでしょう。

税金以外の債務がない場合

滞納額や滞納している期間にもよりますが、各窓口において、支払時期や方法について相談できる場合もあるようなので、窓口で相談してみるのもよいでしょう。相談先は、税金の種類によって、税務署であったり、地方公共団体の税事務所であったりと異なりますので注意が必要です。納税通知書などの書面に問合せ先が記載されていると思いますので、まずはそちらを確認するのが良いでしょう。
手元に書類がない場合は、国税庁や各地方公共団体のホームページで確認することをお勧めします。また、各種税金の窓口についてはおおむね次の表のとおりです。

税金の種類 窓口
国税(所得税、復興所得税、相続税、贈与税、消費税、酒税、自働車重量税など) 各地域の税務署
地方税(個人事業税、法人事業税、自働車税、不動産取得税など) 道府県の税事務所(名称は、各道府県によって異なります。)
地方税(固定資産税、都市計画税、住民税、軽自動車税など) 各市町村の税務課(名称は、各道府県によって異なります。)

東京都23区の場合は、問合せ先が少し異なります。

税金の種類 代表的な税金の例
地方税(個人事業税、法人事業税、自働車税、不動産取得税など) 各区の都税事務所
地方税(住民税、軽自動車税など) 各区の税務課(名称は、各区によって異なります。)

まとめ

税金は、滞納すると延滞金が生じますし、破産をしても免責されません(法人については、消滅するので事実上その法人に対して請求されないことになるでしょう。)。税金の負担が大きく、他の債務が膨らんでしまうということや、他の債務のやりくりをしていて税金が後回しになってしまい、重い負担となってしまったという状況になりかねませんので、そうなる前に、早期に弁護士に相談し、債務の整理を行うことが望ましいでしょう。

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